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小説『深い河』への誤解―日本人の救いとキリスト教④
2011-08-01-Mon  CATEGORY: キリスト教

 士官学校出身の職業軍人の経歴をもつネラン神父は、愛国心の真の意味がわかる人でした。

 同時に、元来本物の自由人であった彼は、誰もが人間であることに変わりはなく、フランス人だの、日本人だのと、国籍や人種に拘るのはバカであると公言して憚りませんでした。

 また一方で、日本独特のある種の雰囲気や文化的背景が実際にあることも認めていました。たとえば、山本七平(イザヤ・ベンダサン)氏が言うところの「日本教」という言葉は、一つのヒントになると考えていました。

 とは言ってもネラン神父の考え方は、山本氏が考える「日本教」では全くありませんでしたが、わたしたちは度々そのテーマを巡って議論を交わしたものです。

 そして、(あまりにも日本のキリスト教ということに拘りすぎますと、キリスト教の普遍性がぼやけてしまいますから十分に注意を払ったうえではありますが)日本の文化的背景を踏まえた「救済」のテーマが特に重要な課題だとの認識で一致していました。

 さて、この問題、キリスト教と現代日本人の救いを真正面から取り扱った小説は、遠藤文学最後の大著『深い河(ディープ・リバー)』と申し上げて間違いないでしょう。ご承知のように、ネラン神父がモデルのガストンも病院ボランティアとして再登場しています。

 フランス文学を懸命に勉強した遠藤周作氏らしく、さまざまな、自分の過去の小説の主人公たちが登場する手法はバルザックの影響だと思われますが、それぞれの登場人物に日本的な「転生」を語らせているために、遠藤氏が考えていた本来の日本人の救いの問題とは異なり、少なからず誤解を与える場合があるようです。

 実は、この『深い河』が示している作家の意図が何かについては、日頃から度々質問される内容でもあります。古くからのお客様でもあるノートルダム清心女子大学キリスト教研究所の山根公道先生が、

 沼田にしても美津子にしてもこちらの世界にいて「深い河」のほとりに立っているのであり、その河の向こうのあちらの世界に何があるかは、それが、転生なのか、どうか、わからないのが正直な気持ちであるに違いなかろう。(中略)この小説『深い河』には輪廻転生の世界が描かれているという人がいれば、それは明らかに誤読であろう。実際には、ヒンズー教でいう意味の輪廻転生は描かれておらず、「深い河」に佇み、その彼方に視線を向ける者のみが描かれている

との重要な指摘をされていますが、わたしもまったく同感です。また次のようにも述べておられます。

 『転生』という言葉を、大津の場合はキリスト教の信仰から復活と重ねて、木口の場合は仏教、特に浄土教の信仰から浄土への往生と重ねて、用いているといえるのであり、この点はこの小説を読むうえで誤解せぬよう注意せねばなるまい。遠藤はこの小説のなかで、「転生」という言葉をこのような独自の意味で用いることで、転生の河と呼ばれるガンジス河によって表された「深い河」が、ヒンズー教徒のみならず、キリスト教徒にも、仏教徒にも、すべての人の深い魂の次元での救いの象徴となるように描いているといえるのである。
 (引用はともに、山根道公著『遠藤周作「深い河」を読む――マザー・テレサ、宮沢賢治と響きあう世界』朝文社刊より)

 これらの点を押さえておくことは、この作品を読むうえで非常に大切です。詳細は山根先生のご高著にお譲りしますが、この小説のポイントは「転生」を、仏教の前提である「輪廻転生」と同じには考えていないというところにあるのです。

 この夏、みなさまの中で、論文対象として『深い河』を読み進める方がおられましたら、この解説書は必読書に数えられるはずです。今後、遠藤文学を研究する学生の方には特にお勧めいたします。

 ちょっとカタイ話が長く続きましたので、息抜きを一つ。

 東京・銀座には中央通りに面した老舗の有名なキリスト教書店教文館があるのをご存知でしょうか。

 1885年(明治18年)に、キリスト教の出版社・書店として創業され、銀座には1891年に出店し、「子どもの本のみせ ナルニア国」(6階)、カード・グッズ類を扱う「エインカレム」(4階)、「Cafeきょうぶんかん」(4階)などがあります。

http://www.kyobunkwan.co.jp/

 1980年に歌舞伎町のオアシスとして出店したのがエポペですが、そのさらに100年近く前から銀座のオアシスとして営業されているそうです。どの階も素敵な場所ですので、どうぞお立ち寄りになってみてください。

 ちょっとしたキリスト教の世界に子連れでも気軽に浸れると思いますし、このブログでもご紹介している書籍のほとんどが手に入るはずです。ちなみに、何故かネコものの雑貨フェアもあって、品揃えも豊富です(笑)。

 現在は、馬場のぼる没後10年記念展「11ぴきのねこがやってきた」が好評開催中ですので、そちらもぜひご覧になってみてはいかがでしょうか(実は大きなねこさんには二回もお世話になってしまいました…)。
(会期:2011年7月15日(金)~8月18日(木) 会場:教文館9Fウェンライトホール)

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