今回のエポペのチャリティ・クリスマスにご招待したネラン神父のお兄さん夫婦のお孫さん、ネラン君の家族と日本との長年の結び付きを物語るエピソードの一つ。彼の祖父と祖母がフランスから日本に初めて来られたときのお話です。ネラン神父自身の言葉からご紹介いたします。皆さまのお越しをお待ちしております!
●第36回エポペのクリスマスのご案内
エポペの歴史の中にはこんなビッグ・イベントもあった。
昭和五十七年十二月で私が日本に釆てからまる三十年たった。百瀬洌氏のリーダーシップでエポペのお客たちが私の日本滞在三十周年を祝ってくれることになった。
その会は昭和五十八年二月十六日、真生会館で二百五十人もの人が集まって開かれた。たいへんな盛況だった。
いっぱんに、こういう会の場合、そのパーティーの主賓にプレゼントが贈られることになっている。私は、パーティーの始まる前に、思いがけないプレゼントを贈るから、と聞かされた。思いがけないプレゼントとはいったい何だろう。着る物とか飲み物とかではあるまい。まるで想像がつかない。思いがけないというのだからどうせわかるはずがない。前もってあれこれ考えるのはよした。
パーティーの出席者が全員揃ったとき、司会者が、私に壁の方を向くように命じた。私はそれに従った。一分ぐらいたって、こちらを向いてくれと言われた。そうしたら……、私の前に兄夫婦が立っていた。
一瞬、夢をみているのではないかと思った。全く思いがけないプレゼントだった。兄は本来出不精なのだ。今まで何回も日本へ見物に来るように誘ったが、言葉が通じないとかなんとか言って腰を上げようとしなかった。それが、今、エポペのお客に招待されて私の前にいる。
私にとってこの思いがけないプレゼントは本当に何よりの贈り物だった。この思いがけない兄弟の出会いはニュースとしていくつかの新聞や雑誌に取り上げられもした。
後で、いろんな人から「本当はあなたは知っていたのでしょう」と言われた。いや、私は本当に知らなかった。この秘密は最後まで洩れなかった。日本人は秘密を守ることにおいて実にみごとだ。
(G・ネラン著『おバカさんの自叙伝半分―聖書片手にニッポン40年間』講談社文庫より)